いつも口にする食品がどのように作られ、どんな歴史の中で生まれてきたのかを考えることが、食事をより楽しくしてくれると思う。おでん種の中でも関西では滅多にお目にかかれないのが「ちくわぶ」だ。小麦粉と水で作られ、モニッとした独特の食感がある。『ちくわぶの世界』は、ちくわぶ愛にあふれた著者が各地のメーカーを取材して歴史をひもとき、実際に手作りしてみたり、レシピを紹介したりと、様々な角度からちくわぶの魅力に迫った一冊。
『日本外食全史』は大阪・神戸の食を始点に、江戸時代からコロナ禍の今までの広い射程で日本の外食産業の歴史を俯瞰する大著。650ページを超すボリュームで、和洋食、ラーメン、ファミレス、B級グルメなど、時代ごとに花開いた食文化の成り立ちと発展について語られる。巻末の参考文献リストは果てしない食の世界への入り口だ。東京・池袋を中心に展開する中華料理チェーン「福しん」の歴史について同社総務部が調査した『「福しん」3つの謎』は、公式通販サイトから購入可。各店の「名物おばちゃん店員」を大切にすることで、なじみ客が増え店員同士のやり取りも円滑に進むなど、ノウハウも満載。どんなチェーン店も最初は小さな規模から始まったのだと知る。
『Neverland Diner』は、様々なジャンルで活躍する100人の書き手が、「二度と行けない」店の味について書き綴った分厚い一冊。食の価値は単純な美味しさにあるわけではなく、むしろ食を取り巻く記憶やドラマの方が後々まで人々を支え続けていくのだとわかる。食べる喜びについての表現方法が人それぞれなのも面白い。『つつまし酒』は、気鋭の酒場ライターとして活躍する著者が光文社の公式noteに連載したコラムをまとめたもの。連載時期はコロナ禍と重なっており、大好きな居酒屋通いが思うようにできなくなった日々の中だからこそ、知恵を絞って飲み続けようとする姿勢が浮き彫りになる。読んでいてお腹が減り、前向きな気持ちになる。