47都道府県合同企画
沖縄県は、
ずっとおいしいか?
沖縄の若い世代が、「食」から沖縄を考えた。
訪問者
宮城 良美
沖縄県立芸術大学大学院
造形芸術研究科
受入者
真境名 一夫
農業生産法人真常
沖縄伝統野菜「島唐辛子」。 ピッと辛い実は「伝統」をアップデートする。
「伝統工芸の宝庫」と言われる沖縄。中でも織物は各地で技法が発展し、織り継がれている。沖縄県立芸術大学大学院2年生の宮城良美さん(24)は織物の魅力を引き出し、多くの人に伝えようと、2つの技法を組み合わせ、表現の幅を広げる挑戦を続けている。「伝統」をアップデートするにはどうすればいいのか、課題に取り組む農家を訪ねた。  ネットが張られたハウスの中は赤、オレンジ、黄色、緑の色鮮やかで小さな実が至る所に実る。一面に広がるのは沖縄の伝統野菜「島唐辛子」。沖縄県民にとっては野菜というより、泡盛につけた調味料「コーレーグース」の方がおなじみだ。  「一つ一つ手で摘み、へたを取り、色や形を判別し、それぞれに適したものに商品化しています」。農業生産法人「真常」(儀間浩社長)の専務でこの畑の責任者でもある真境名一夫さん(64)が説明する。現在、国内で流通する唐辛子のほとんどが輸入品の中、真常は島唐辛子を自社栽培し、調味料として商品化している。沖縄の島唐辛子は、タバスコや鷹の爪よりも辛みが強い。それを使った「コーレーグース」や一味唐辛子はピリッとした辛さが好評でリピーターも多い。  課題もある。「葉野菜よりも高単価だが、毎日食べるものではないから消費量は少ない。だからやりたがる人は少ない」。人手不足は多くの生産現場の課題だ。真境名さんは「好きなだけでは続けていけない。持続可能なものにするにはちゃんと収入を得られるようにしないといけない」と話す。
24歳が沖縄県の食の未来を考えた。
農作物の品質を高めるだけでなく、市場を意識した商品開発で消費拡大を図る。定番のコーレーグースだけでなく、ペペロンチーノ用の激辛タイプ、島唐辛子入りのラー油など種類豊富だ。「島野菜だから食べてくださいではだめだ」と指摘する真境名さんの言葉に宮城さんが大きくうなずく。伝統の普及継承という共通の課題を持つ農家との対話で気づいたことは―。「地元にあるいいものを知る機会が少ない。私も島唐辛子がどう作られているのか知らなかった。多くの人が興味を持つためには作る過程が見えるようにするのも一つの方法かもしれない」と前を見つめた。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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