47都道府県合同企画
愛媛県は、
ずっとおいしいか?
愛媛の若い世代が、「食」から愛媛を考えた。
訪問者
山磨 虎多郎
愛媛大学
大学院 理工学研究科
受入者
中田 知公
ヤマニ中田水産
愛媛県で養殖漁業を営む中田さんに、 AI活用の現実を尋ねる。
山磨虎多郎さん(24)は愛媛大大学院理工学研究科で、水中カメラの映像から魚の3次元位置情報を得て魚群の総数を推計したり、個々の健康状態を観察したりできるシステムの開発に取り組んでいる。「いけす内の正確な数を把握すれば給餌のロスを減らせ、データを基に魚の行動の異変をつかむことで魚病の防止につながる」と研究の狙いを語る。実用化に向けて意見を求めたいと、宇和海の沖合でマダイなどの養殖を手掛ける愛南町のヤマニ中田水産の中田知公代表(45)の元を訪ねた。 20基のいけすで22万匹を育てる中田さんの最大の悩みは餌代。3年前の1・3倍に上昇、生産コストの6~7割を占めている。餌の無駄を減らし、人手不足にも対応できると数年前、東京のベンチャー企業が開発した人工知能(AI)による自動給餌機を導入したが、故障が多いことなどから一旦断念した。「AIがまだデータを蓄積し切れていない面もある。人の目で判断する方が早い」と中田さん。それでも「深刻な人手不足の中、漁業の機械化は必須。人が担う中核業務は2割。8割は機械が担える」とみて、大手電機会社の養殖網自動掃除機の開発にも参画している。ただ、網の付着物も多種多様。開発は一筋縄ではいかない。高額な機器となれば費用対効果も課題だ。山磨さんの研究に期待を寄せつつ、「研究者は全自動化を目指すあまり多くの機能を持たせて機械を複雑にしがちだが、もっとシンプルでいいんよ。現場の視点で開発してほしい」とアドバイスする。
24歳が愛媛県の食の未来を考えた。
体験を終えた山磨さんは語る。 開発したシステムを現場で実際に運用し、保守していくことの難しさを痛感しました。「どれだけ機能が満載のシステムでも、現場の人が使いやすいものでないと意味がない」との中田さんの言葉は研究の教訓になりました。AIなど情報技術の活用で今後、画期的なシステムが次々登場すると思いますが、AIが膨大なデータを蓄積したとしても、未知の魚病の発生など不測の事態は必ず起きるでしょう。その時、人間の経験に基づいた判断に勝るものはないのかもしれません。「人が行うこと」と「機械でできること」の「線引き」もとても重要だと感じました。丸々と元気いっぱいのマダイやシマアジを育てる中田さんに「使いやすい」と言ってもらえるようなシステムを研究・開発していきたいです。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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