47都道府県合同企画
香川県は、
ずっとおいしいか?
香川の若い世代が、「食」から香川を考えた。
訪問者
勝浦 弓葵
香川大学
教育学部
受入者
石崎 真彦
にじの百姓
社会科教員から専業農家に転身 生産者不足の現実目前に
勝浦弓葵(ゆき)さんは香川大学で小学校教諭を目指して勉強中の20歳。教職に限らず、消防、防災、農業…、さまざまなことにチャレンジし、充実した学生生活を送っている。そんな勝浦さんが訪れたのは、社会科教員から専業農家に転身した、まんのう町の石崎真彦(まさと)さん(40)の田畑。 石崎さんは農薬や肥料を使わない自然栽培で米や野菜を育て、SNSで販売するほか、育てた米や麦、大豆を使って自家製のこうじやみそ、しょうゆを造っている。祖父が兼業農家で身近だった農業に取り組むうち、もともと好きだったものづくりの面白さにはまった。周囲からは「なぜ教員を辞めてまで」「農業では食べていけない」と何度も言われたが諦めきれず、家族の協力を得て、約6年前に専業農家となった。 ただ、将来への不安はある。「いま現役で農業をしている70歳代後半〜80歳代前半の人がリタイアするのが5〜10年後。生産者がいなくなる現実がそこまで迫っています」と訴える。「昔の知恵はためになるものばかりですが、全て口伝。今のうちに話を聞いて、身に付けないと手遅れになります。子どもの頃の土に触る経験が農業の土台をつくるのに、今はその機会も減っています」と危機感を募らせる。 勝浦さんも「幼い頃は米農家の祖父母の家で農作業を手伝っていましたが、大人になるにつれ機会が減りました。でも楽しかった記憶は今でも鮮明に残っています」と話す。石崎さんは「いざという時に力を発揮するのは、体験を通して身に付けた知恵や体力。1次産業に身をおく人たちは、そんな生きる力を身に付けています」と強調する。
20歳が香川県の食の未来を考えた。
「今の子どもは1人1台タブレットが支給され、多くの情報を取り入れられる半面、必要な情報を判断し、正しい情報を見極めて考える『主体性』を持つことが求められます」。大学での授業などを通してそう感じている勝浦さん。対談を終えて、「石崎さんから『子どもにとって身近な大人の教員が、情報を正しい方向に整理することが大切』とアドバイスをいただき、本当にその通りだと思いました。農業に対するイメージも同じ。農業は本来楽しくてやりがいのあるもの。古い思い込みを取り除いて、学校給食から農業の必要性を伝えたり、授業に土に触れる体験を取り入れたりして、農業や食の大切さを次世代につなげられる教員になりたいです」と目を輝かせる。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
おすすめ記事