47都道府県合同企画
京都府は、
ずっとおいしいか?
京都の若い世代が、「食」から京都を考えた。
訪問者
前田 就紀
同志社大学
経済学部
受入者
井上 保治
亀岡クルベジファーマーズ
京都府でクルベジ農家の井上さんに地球温暖化を防ぐ方策について尋ねる。
前田就紀(なるき)さん(20)は同志社大経済学部の2年生。ゼミでは環境経済を専攻している。主に海洋プラスチックごみの汚染が、日常生活に与える影響について研究。農業ではどんな環境対策がなされているか疑問に感じていたところ、炭を畑に埋めることにより二酸化炭素(CO2)削減を実現しつつ収穫する野菜「クールベジタブル(以下クルベジ)」を実践する農家を訪問することができた。 亀岡市で米と野菜を作っている井上保治さん(54)は40歳で就農し、父から受け継いだ田んぼで米作りをしていた。しかし米だけでは生活が苦しく、野菜も作ろうと思っていたところ、「クルベジ」と出合えたと話す。 地球温暖化を食い止めるためにはCO2の削減が重要だが、間伐材や竹、もみ殻などを炭化して畑に埋めると、地中の炭素を増やし、大気中の酸素との結び付きを抑えられ、CO2削減に貢献できるという。また、微生物のすみかにもなり、土壌改良にもつながる。 亀岡市内では「クルベジ」を続けている農家は2015年の開始以降、4分の1程度に減少したものの、面積は拡大傾向にあるという。井上さんは「人が生きていくためには健康が大切で、健康を支えるのが農業です。機械化・化学肥料を多用した農業や食を輸入に頼る方法ではいつか無理がきます。外国に依存せず、かつ、接続可能な農業を、生まれ育った土地の人たちと一緒に目指したい。そのための方策がクルベジなのです」と力説する。
20歳が京都府の食の未来を考えた。
体験を終えた前田さんは意欲を見せる。「井上さんは『自然な農法で経営が成り立つよう、耕作放棄地を増やさず、安定した収量を確保し自分たちの住む土地を守り育んで、農業を次世代へと受け継げる魅力あるものにしていきたい』とも語っていました。生産と消費の関係や、生産現場の苦労を知って驚きました。研究内容と農業は別物ですが、環境というくくりでは通じます。SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けても、土地の環境に応じた生産は重要です。視野を広く持って物事の本質を見極め、環境負荷をかけずに食を安全に営む方法を、地域、企業、行政などが一体となって実践すれば、農業の未来にも役立つのではと思いました」。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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