47都道府県合同企画
奈良県は、
ずっとおいしいか?
奈良の若い世代が、「食」から奈良を考えた。
訪問者
堀 琴実
奈良女子大学
工学部
受入者
三浦 雅之
株式会社 粟
奈良県で大和野菜を栽培する三浦さんに 高齢者に寄り添う農業について尋ねる。
堀琴実さんは奈良女子大学工学部に在籍する19歳。現在は建築を学び、今年の春からセンサ工学や人工知能などの研究に取り組むかたわら、祖父母が大阪府内で農家をしており農業にも関心を持つ。今回、奈良市内で大和野菜を栽培しながら、自社で経営するレストラン「清澄の里 粟」で大和野菜を使った料理を提供する「株式会社 粟」の拠点を尋ねた。 同社の代表を務める三浦雅之さんは元々、福祉や医療に関係する仕事に就いていたが「伝統野菜を育て食文化を継承し、生き生きとしたコミュニティを形成することで高齢者の健康寿命を延ばしたい」との思いで事業を始動。1998年から地域に絆が生まれ子どもや高齢者も生産に関わるという視点を持った農業をスタートさせた。まずは大和野菜を自分たちで育てようとしたが、当時栽培が確認されていたのはわずか9種類と判明。規格にはまりにくいため一般流通せず、在来種の調査がされていなかったことを知る。「誰もしてこなかったのならやってみよう!」と一念発起。県下の農家を一軒ずつ訪問するなど地道な活動を続け、今では約53品目を取り扱うまでになった。2002年には大和野菜を食材にした農家レストラン「清澄の里 粟」をオープンさせた。 事業を始めて25年。「最近ではレストランが取り組むフードロス削減や地産地消など持続可能な食の活動に対し、飲食店を厳選し格付けする本で評価を得た。これまでの取り組みを認めてもらったようで嬉しい」と三浦さんは笑顔で語る。   「斜面にあるトウガラシ畑を拝見しましたが農作業は力仕事が多い。テクノロジーを駆使することで年老いても長く農業を続けられるような環境をつくることができれば」と語る堀さん。「農学からでは生まれない発想を期待してます」と三浦さんはエールを送る。
19歳が奈良県の食の未来を考えた。
取材を終えた堀さんは語る。 「地元で大切に育てられている伝統野菜がたくさんあることを初めて知りました。それらはとても美味しいのに規格の統一性などの問題から広く流通されなかったことも。私の祖父母は高齢になり、農業を続けることが体力的に厳しくなっています。工学部で学んだ知識を生かし、将来はロボットや人工知能、センサ工学など先端技術を活用した『スマート農業』によって、体力に自信がない高齢者や障害者でも容易に農業を続けられ、農業を通じて生きがいを感じると共に人と人との触れあいが生まれるような環境づくりのアシストができればと思います」。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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