47都道府県合同企画
和歌山県は、
ずっとおいしいか?
和歌山の若い世代が、「食」から和歌山を考えた。
訪問者
堀 伸行
和歌山大学
経済学部
受入者
岡本 和宜
株式会社日向屋
ミカン畑を鳥獣害から守り、耕作放棄地の活用も模索。
和歌山大学経済学部の堀伸行さんは、商品開発やマーケティングを学ぶ20歳。将来、商品開発の道に進むには、実践してみなければ分からないことを知るのが課題と捉え、さまざまな体験をしてみたいと考えている。農業に関する授業を受け、農家の経営にも興味を持ち始めたときに、所属するゼミの教授から田辺市のミカンや梅を栽培する、日向屋を紹介され、訪れてみた。 日向地区は山間部にあり、傾斜地にミカン畑が広がる。自然に囲まれた畑には鳥獣の被害が付き物だ。地域では高齢化による担い手不足から耕作放棄地が増え、イノシシやシカに農作物を食べられる被害が深刻になっていたという。日向屋の代表、岡本和宜さん(45)は、8年前に若手農家を集めて狩猟に乗り出した。だが、ミカンを守るためとはいえ、動物を殺すことに葛藤もあった。 そこで、鳥獣害対策を意味のある活動にしようと発想を転換。ジビエ解体処理施設を誘致し、イノシシやシカの肉を商品化。地域の厄介者を資源にする取り組みが評価され、鳥獣対策優良活動表彰の農林水産大臣賞を受賞した。 今後は、山頂の近くにある耕作放棄地の眺望に目を付け、観光に活用することを計画。風の音と鳥の鳴き声の中で海や星を眺められるキャンプ場にしたいと考えているそうだ。海でキャンプをしたときに波の音で目覚めた体験を持つ堀さんは「鳥の声で目が覚めたら最高」と目を輝かせた。
20歳が和歌山県の食の未来を考えた。
岡本さんの話を聞き終えた堀さんは「考え方を変えれば、有害な敵を味方にできる。ただ農作物を作るのではなく、イノシシやシカの肉を生かすのは商品開発にもつながる発想で、すごく勉強になった」と語る。 農業の敷居を低くしながら「人が集まる農業」「誰でもできる農業」を目指す日向屋には、同世代の若者も体験に訪れていると聞いた。「農業を体験してみたくても、どこに行ったらいいか分からなかった」と打ち明けると、「うちに来たらええやん。ミカンを収穫して、ジビエの鍋を食べよう」と答えてくれた。収穫や観光の体験で若者を呼び込めば、担い手不足や耕作放棄地の課題を解決し、地域の活性化にも貢献できるという思いを強くした。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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