47都道府県合同企画
東京都は、
ずっとおいしいか?
東京の若い世代が、「食」から東京を考えた。
訪問者
濱下 果帆
お茶の水女子大学大学院
人間文化創成科学研究科
訪問者
西田 依小里
お茶の水女子大学大学院
人間文化創成科学研究科
受入者
磯沼 杏
磯沼ミルクファーム
開かれた牧場で、持続可能な酪農を目指す
東京都八王子市の住宅地に隣接する磯沼ミルクファームは、約70年前よりこの地で酪農を営む。現在、お茶の水女子大学大学院で食や栄養に関する研究をしている濱下果帆さん(25)と西田依小里さん(24)が訪れ、同ファームの3代目・磯沼杏さんに都市型酪農について話を聞いた。 「この牧場では、3つの理念を大切にしている」と磯沼さん。1つ目は「家畜福祉」。牛たちには餌や水、行動の自由があり、命あるものとして尊重されている。2つ目は、現在は7種、約80頭の牛を飼育し「品種の多様性」を守り、酪農文化の豊かさを発信する。最後が「循環型酪農」。地域の野菜くずなど食品廃棄物を利用した飼料を作り、牛の糞尿を堆肥化し、地域の農家に提供・販売するという循環を生み出す。これらの理念を掲げながら、誰もが酪農に触れられる開かれた牧場「オープンファーム」の取り組みを続ける。一方で「酪農は利益が出にくい産業。現在は円安などの影響で飼料も高いため、持続可能なビジネスモデルの構築は切実な課題」と磯沼さん。 その課題解決のために推進する事業の一つが、2022年に敷地内にオープンしたレストラン併設の販売拠点。約30年前から牧場で搾乳した牛乳を原料に自社工房でヨーグルトを製造しているが、他にもプリンやケーキなど自社加工品の開発・販売に力を入れる。「店舗の隣に牧場があることで牛や牧場を体感でき、その価値の理解にもつながる。この先も地域で愛される牧場であり続けるためにも大切なこと」と語った。
二人の若者が東京都の食の未来を考えた。
取材を終えた二人は「牧場の取り組みを知って、応援したい気持ちになった」と感想を述べ、自身の研究課題につなげてこう語った。「私は外食産業における食品ロスの削減について研究しているが、この牧場のように食が生まれる背景に触れられると、食への感謝の気持ちが生まれ、食べものを捨てなくなると思う」と西田さん。濱下さんは「健康的な食=栄養管理やカロリー制限と思われがちだが、食の文化的な面を知ることで、心も豊かになり真の豊かで健康的な食生活を送ることができるのではないか。生産現場を体験することも、食文化を知ることに直結する」と話す。 「食の未来のため、若い世代の柔軟な発想は大切」という磯沼さんに「お話を伺えてよかった。今後は、私が専門とする“食”に深いつながりがある酪農や農業と連携した活動も考えていきたい」と濱下さん。西田さんは「この牧場の価値や酪農の大切さなど、今回学んだことを意識的に周囲に伝えていきたい」と笑顔で展望を語った。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
おすすめ記事