47都道府県合同企画
千葉県は、
ずっとおいしいか?
千葉の若い世代が、「食」から千葉を考えた。
訪問者
原井 優里
千葉大学
理学部
受入者
大野 俊江
(株)オオノ農園
千葉県名産の「落花生」。 品質や生産量の安定に気候変動が大きく関わる。
千葉県で落花生を有機肥料で栽培する大野俊江さん(68)に持続可能な農業について尋ねる。原井優里さんは、千葉大学理学部地球科学科で地層の研究に取り組む21歳。高校時代の地学の授業で地層について学んだ際に強い関心を持ち、進学先に地元の大学を選んだ。東京都に隣接する都市部で育ったために周囲には田畑がなく、千葉県が全国有数の農業県だという実感が湧かない。最近、新聞で、地球温暖化による農作物の不作、国際情勢による物価高騰の影響を受けた農家の苦境を知り、千葉県の農業の現状について興味を持って生産現場を体験することになった。 大野さんが嫁いだオオノ農園は、香取市で代々農業を営み、約15ヘクタールの畑で有機肥料を与えた落花生3種類を栽培する。天日干しした落花生は香り豊かで、頬張れば上質な甘味が口いっぱいに広がる。味つきピーナツやペースト、ジェラートなどに加工して販売もしている。露地栽培の落花生は気候変動の影響を受けやすく、品質や生産量の安定が難しい。「これ以上暑くなると、どうなることか」と苦笑。「人件費のほか、資材費も上がっているけど、販売先の事情もあり卸価格に転嫁できない」と打ち明ける。「ずっと農業が盛んだった香取市の畑では、どんな作物でも元気に育つ。未来に今の農業を残せるかな」と不安がる原井さんに、「若い人たちが環境に気を付けて暮らし、新しい技術を開発してくれるはず。そうすれば、いつまでもおいしい農作物が取れるよ」とほほ笑む大野さん。
21歳が千葉県の食の未来を考えた。
「大学では、地層の粒子の大きさに注目して観察していましたが、オオノ農園では土の栄養素についても考えるきっかけになりました。地層は過去についての研究で、畑は現代の土壌について学べる場であり、大変興味深かったです。オオノ農園で育った落花生は味が濃く、天然の大地と有機肥料といった自然の力の偉大さを感じました。ジェラートやぜんざいなどの加工品の種類が豊富で、落花生の新たな魅力を味わえました。物流の発達で世界各地からさまざまな食品が手に入る中、もっと落花生の魅力を広く伝えて農家の収入アップにつなげるようにしたい。そして、みんなと一緒に環境に優しい生活を心掛けて地球温暖化対策を進め、持続可能な農業に少しでも貢献したい気持ちが高まりました」
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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