47都道府県合同企画
埼玉県は、
ずっとおいしいか?
埼玉の若い世代が、「食」から埼玉を考えた。
訪問者
糸 健哉
埼玉大学
工学部
受入者
武田 浩太郎
むさし野自然農場
江戸期から続く落ち葉堆肥農法に、 脱炭素社会への手がかりを探す。
糸健哉さん(21)は、卒業研究の対象に「モリンガ」を選んだ。モリンガは、北インド原産のワサビノキ科の植物。生育が速く、ほかの植物と比べて二酸化炭素(CO2)の吸収量が多いとされる。研究は、県内で栽培したモリンガのCO2吸収量の評価。栽培から加工までのCO2排出量と比較して脱炭素効果を検証する。 「これまでの研究で可能性を感じている」と糸さん。「例えば、モリンガの炭を畑の土づくりなどに生かせないか」。利用の道が広がれば栽培の普及につながる。ただ、糸さんは農業の現場を知らない。そこで、世界農業遺産の「武蔵野の落ち葉堆肥農法」の守り手、三芳町のむさしの自然農場を訪ねた。 収穫盛りのサツマイモ。栽培に適したこの土地は時季になると「赤い風」が吹く。先人は江戸期から、栄養分の少ない赤土の台地を落ち葉堆肥農法で改良してきた。 代表の武田浩太郎さん(43)は、320年以上続くサツマイモ農家の10代目。伝統農法を守りつつ、「富の川越いも」のブランド化に取り組む。「モリンガの炭やたい肥が土壌や作物の生育にどう影響するか知りたい」。愛情を込めて土を育て、作物を作る「培人(つちかいびと)」の声を届けた。 周辺は「いも街道」として知られ、ブランド化には近隣農家との協働が欠かせない。モリンガが根を伸ばし、種を飛ばして隣の畑を浸食すればトラブルにつながりかねない。「脱炭素だけでなく、なりわいとしての農業に目を向けてほしい。さらに広い領域からの研究に期待している」。武田さんは農業に寄り添う視点を提案した。
21歳が埼玉県の食の未来を考えた。
畑を後にした糸さんは語る。 「畑は商売道具」という言葉に、生活をかけて食や伝統を守り続ける真剣さや厳しさを感じました。研究の目的は、脱炭素社会の実現という社会課題の解決です。「重要性はよく分かる。農業にもできることがきっとある」という言葉に勇気づけられました。モリンガの栽培と活用で社会課題を解決するためには、研究の視野を広げ農業に及ぼす影響や利点などについてもっと実証する必要があることがよく分かりました。実験用の畑と研究は後輩へと引き継ぎます―。「伝統」と「革新」、それぞれの技術が発展し続けて、今の研究がこれからの時代に合った新しい仕組みになっていってほしいなと感じました。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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