47都道府県合同企画
群馬県は、
ずっとおいしいか?
若い世代が、農林水産業のあり方を通して、「食」の明日を考えた。
訪問者
関口 智之
高崎健康福祉大学大学院
農学研究科
訪問者
木名瀬 将栄
高崎健康福祉大学
農学部
受入者
浅井 広大
養蚕体験・研修所「大丸屋」
群馬の「養蚕業」が衰退の危機 仲間を受け入れ、伝統技術を次世代へ。
関口智之さんと木名瀬将栄さんが在学する高崎健康福祉大学の農学部は5年前に新設されたばかり。1期生にあたる関口さんは大学院へ進学したフロントランナー。新しい学部に将来性を感じた2期生の木名瀬さんは頼もしい先輩の背中を追いかける。そんな二人が訪れたのは、世界遺産・富岡製糸場のある群馬県富岡市。この地に移住し、7年前から養蚕を営む浅井広大さん(34)に話を聞いた。 浅井さんは、市が養蚕業の継承のため改修した、2階に作業場のある築140年の養蚕家屋で暮らす。敷地の横に養蚕用のビニールハウスを設け、繭の生産量を増やすために奮闘。「今年は猛暑の影響で繭が小さかった」と悔しがる浅井さん。養蚕の道を選んだのは「蚕と向き合う農家さんの姿がかっこよかったから」と振り返る。かつては養蚕が盛んだった富岡市。現在は生産農家の高齢化が進み、繭の生産量が激減。「数少ない技術者がもう80歳前後。今教わらないと伝統産業が途絶えてしまう」と危機感を抱く。浅井さんは興味のある人に見学や作業体験を受け入れ、最近はSNSを通じて外国人旅行者も見学に来るようになった。新規参入者や研修生もちらほらいるが、参入障壁となるのが養蚕に必要な広い場所の確保と、閑散期の問題だ。養蚕のシーズンは5月〜10月まで。浅井さんの場合、冬場は借りた畑で栽培したネギを出荷している。 「次の世代へ継承していくには何かしらの付加価値が必要なのでは。重労働で利益が合わなければ若者はやりたがらないと思う」と関口さんは素直な感想を述べる。
二人の若者が群馬県の食の未来を考えた。
これに対して浅井さんは「繊維業界ではこれからシルクが来ると言われています」と明かす。日本では縮小傾向でも世界で絹の需要がある。伝統の養蚕スタイルが評価され、世界的なアパレルブランドや大手商社から実際に取引の話も届くが、「ロットが全然足りなくて」と苦笑する。その一方で、工場で人工飼料を与えて量産する話も聞こえてくる。「世界が目を向けていることに養蚕業の可能性を感じました。シルクの良さを知らない若い世代に伝わるように発信力のあるSNSをもっと活用すべき」と関口さん。木名瀬さんは「伝統技術をしっかり守りつつ品質の安定や量産のために一部オートメーション化できれば。群馬の養蚕が世界とつながる明るい未来はそう遠くないかもしれません」。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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