47都道府県合同企画
福島県は、
ずっとおいしいか?
福島の若い世代が、「食」から福島を考えた。
訪問者
益山 智恵理
郡山女子大学短期大学部
地域創成学科
訪問者
添田 日奈
郡山女子大学短期大学部
地域創成学科
受入者
吉田 さやか
(株)ランドビルドファーム
震災後の古里に戻り 新たな特産品サムライガーリック栽培
益山智恵理さんは郡山女子大学短期大学部地域創成学科で学ぶ19歳。南相馬市出身で6歳のときに東日本大震災を経験した。今は実習を通じて地域課題を考えたり、地域社会に発信する方法を学んだりしている。もともと地元が好きな益山さん。そこで、東京電力福島第1原発事故で一度は全町避難をしたが、古里の浪江町に戻り、新たにニンニク栽培を始めた人がいると知り、同じ学部で学ぶ友人の添田日奈さん(19)と一緒に訪ねてみることにした。 益山さんが最初に見学したのは川沿いの厩舎。馬の世話をする吉田さやかさん(37)が迎えてくれた。飼育しているのは毎年、騎馬武者が出陣して壮大な戦国絵巻を再現する相双地方最大の祭り「相馬野馬追」に出場する馬だ。「高校生のころは野馬追に参加していたのよ」と吉田さん。実は、この馬の堆肥を使い育てているのが、地元の特産品となりつつあるニンニク「サムライガーリック」。もちろん相馬野馬追にちなんで付けた名前だ。 吉田さんは、避難先の福島市で起業し、インバウンド向けの甲冑着付け体験事業を始めた。マーケティングの仕事などを経て2020年、家族と共に古里に戻った。代々続く農家で、母屋は築150年の歴史ある建物。「ここは守ろう」と家族で決め、地元で何ができるか考えた。そこで思い出したのが、相馬野馬追の時期、縁起を担いで食べるカツオ(勝男)で、そこに欠かせないのがすり下ろしたニンニクだった。青森県で栽培法を学び栽培を始めた。地元に戻った同世代の仲間の飲食店などで利用してもらえるようになり、今では東京や仙台の料理店にも提供している。
二人の若者が福島県の食の未来を考えた。
益山さんはニンニクの皮むきを手伝いながら、古里で働くことの魅力を聞いてみた。すると、吉田さんからは「農業が地域の文化をつなぐ」との答えが返ってきた。実際、農業が原発事故で荒れ果てた土地の再生につながり、ニンニクを通じて野馬追や古里のことを知ってもらえる機会が増えたという。「なくなってしまったものをうらやむより、今あるものや今できることを大切にしたい」。この吉田さんの言葉を聞き、益山さんは古里で働きたいと心に決めた。「卒業したら自分は何ができるか、大学で学びながら考えていきます」
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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