47都道府県合同企画
福島県は、
ずっとおいしいか?
福島の若い世代が、「食」から福島を考えた。
訪問者
色川 航介
福島大学
経済経営学類
受入者
長友 海夢
(株)いなびし
湖のやっかいもの「ヒシ」を お茶に変身させ、猪苗代の新たな特産品に。
この春、大学を卒業する色川航介さんは、地域経営を学ぶ22歳。大学の4年間はコロナ禍の影響を大きく受けて、福島県の「いいところ」を知る機会がないままに卒業シーズンを迎えた。福島県を代表する観光地・猪苗代湖にも「実は初めて来た」という。 10月上旬、色川さんは、猪苗代湖に自生する水草の実・ヒシを収穫し、お茶として商品化している長友海夢さん(28)を訪ね収穫体験をした。長友さんにうながされ遠浅の湖岸を歩いて沖まで進み、コンテナにヒシを収穫していく色川さん。一つ手に取り、ユニークな形をじっと観察していると長友さんが「忍者のマキビシの元という説もあるんですよ」と笑顔で説明する。栃木県の出身の長友さんは、猪苗代町地域おこし協力隊に就任して参加したボランティアで「増えすぎたヒシが猪苗代湖の水質を汚染している」ことを知った。同時に「ヒシは食べられるよ」と地元の人に教えられ、「食品として活用できないものか?」とひらめく。食の知識はほどんどなかったが、ヒシを洗って乾燥させ、粉砕・焙煎すると、香ばしくてやさしい味わいのお茶になることを発見。栄養や加工の専門家にもアドバイスを求めて2022年3月に「猪苗代湖産ひし茶・いなびし」を売り出した。道の駅に並べた商品は2年連続で完売。今後は、「忍者のイメージと結びつけるなどしながら、日本文化を好む外国人に猪苗代湖の存在を認知してもらう特産品にしたい」と意気込んでいる。
22歳が福島県の食の未来を考えた。
体験を終えた色川さんは語る。 「まずは猪苗代湖の美しさ、大きさに圧倒され、また来たいと思いました。お茶は、クセがなくて食事にも合いそう。昔から漢方薬として使われてきた実績や、ポリフェノールが豊富という研究結果もあるそうです。県外出身者で先入観のない長友さんの視点が「やっかいもの」のヒシに新たな価値を生み出したのだと感じます。長友さんは町内に会社を立ち上げ「地域にとってプラスになるかどうか」を判断軸に空き店舗活用や教育旅行の受け入れなどをしています。猪苗代に来るきっかけになり、持続可能な水環境保全にも結びつく「ひし茶」で広がる地域の可能性を感じました。なによりも多くの人が猪苗代湖の魅力を知ることが未来につながるのだと思います」
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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