47都道府県合同企画
宮城県は、
ずっとおいしいか?
宮城の若い世代が、「食」から宮城を考えた。
訪問者
高澤 紗奈
東北大学
工学部
受入者
斎田 善郎
斎田農園
世界農業遺産に認定された大崎耕土で 伝統とエコが相成す米作りに挑戦。
高澤紗奈さんは東北大学工学部の1年生で、高分子材料系研究の進路を志望する19歳。東京都出身で、進学を機に仙台市で一人暮らしを始めた彼女は、農産物は値段で選ぶのが常で、あまり産地や作り手を気にしたことはなかったという。今回、広大な田園風景を目の当たりにして感激。地域伝統の稲作文化について興味が湧き、収穫真っ盛りの田んぼに足を踏み入れることになった。 訪れたのは、江戸時代から続く美里町の農家で、7代目を数える「斎田農園」代表の斎田善郎さん(41)。藩政下で広まった稲の杭がけ「穂仁王(横ルビ=ほんにょ)式天日干し」など代々伝わる伝統農法にこだわりながら、宮城で60年も愛されてきたササニシキを含む6品種を手がけ、“恩むす美”ブランドとして独自の販路拡大に挑んでいる。天候に左右されやすく、手間も多い昔ながらの米作り。「若い担い手が少なくなっている現状もあり、この地だからこそ生み出せるお米のおいしさや価値をより知ってもらわねば」と斎田さんは決意を示す。 最先端の材料化学に学究の意欲を高めながらも、学生環境団体でビーチクリーンに取り組み、マイクロプラスチックなどの海洋ごみ増加に関して心を寄せる高澤さん。斎田さんは、「私の田んぼでは、大量の漁業系廃棄物となっているカキの殻などを土づくりに利用しているんですよ」と砕片を差し出すと、「捨てられるはずのカキ殻が、農業の役に立っているんですね!」と驚いた表情で手に取った。
19歳が宮城県の食の未来を考えた。
黄金色に輝く風景を後にして高澤さんが語る。 「これまで、農業をあまり身近なものだと捉えていなかったのですが、穂仁王の稲わらを手に取ったら、私たちがいつも食べているおいしいご飯は、まさにこの田んぼで作られているのだと実感しました。そして、養殖漁業の廃棄物を活用し、環境に配慮した循環型農業を目指している斎田さんが『稲の天日干しのような先人の知恵も見直しながら、科学的な技術をハイブリッドさせて、次の世代に受け継げる農業を実現できれば』と語っていたのも印象的でした。ただ作って終わるのではなく、資源を循環させて環境を守る社会づくりについて思いを巡らすことも、ものづくりの未来に重要だと気づかされました」。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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