47都道府県合同企画
北海道は、
ずっとおいしいか?
北海道の若い世代が、「食」から北海道を考えた。
訪問者
井内 悠介
北海道大学大学院
工学院
受入者
前田 茂雄
前田農産食品(株)
十勝で小麦生産を盛り上げる前田茂雄さんに ロボットの可能性を尋ねる。
十勝は国産小麦の4分の1を生産する一大産地だ。小麦を中心にポップコーン用トウモロコシ、ビートなどの生産、加工を行う本別町の前田農産食品株式会社を、北海道大学大学院工学院博士後期課程の井内悠介さんが訪れた。 140ヘクタールの畑の目の前で、大きな農機具が出迎える。4代目の前田茂雄さんは、自家製小麦をパン店に売りこんだり、小麦キャンプを企画したりするなど、加工品でしか消費者の口に入らない小麦を知ってもらうため、アイデアと行動力で生産を盛り上げてきた。最近では、長年の懸念材料であった農閑期の雇用維持を解決すべく、ポップコーン用トウモロコシを生産し、電子レンジで袋のまま温めて作る「北海道十勝ポップコーン」を販売し、人気を集めている。 井内さんは工学院ながら農地に赴いて除草ロボットの研究を行う。背景には、農業労働人口の減少や、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」で、2050年までに化学農薬の使用量を半減することが求められている現実がある。前田さんも人口減少を危惧する。「本別町民が今約6千人で、生産人口は3千人。これが2045年にはそれぞれ3千人、千人になると言われている」。20年、30年先に向け、1戸あたりの生産性をあげられるのはロボットでは、と必要性を語る。 井内さんが研究・製作中の除草ロボットが稼働している動画を前田さんに見せると話はさらに盛り上がった。ロボットが防水であれば、トラクターでは入りにくい雨の日でも動かせる。「何台ものロボットが勝手に24時間動いて、農家さんは畑に来て『ああ、取れてるな』と確認だけできるのが僕の理想です」と井内さん。前田さんも「めちゃくちゃいいよね。そうなると世界を変えられる」。
25歳が北海道の食の未来を考えた。
井内さんは「雑多な作業は全部機械がやるのが理想」とロボット研究者のプライドを見せる。逆に前田さんは「農業者は食料の原料を作っているから、作り手の価値が出るような商品作りが面白そう」とアイデアをぶつける。実際、今ある農作物は既存の機械で作業体系ができあがっているため、導入は現実的でないと話す。ただ「自分が使うなら新規作物かな」。初年度から雑草の管理をロボットにまかせられれば、挑戦しやすくなるという。「話題性があり、農業の魅力も同時に発信できそう。(生産者が増えれば)食の世界の豊かさをもたらすことにつながる」と先を見据える。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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