47都道府県合同企画
熊本県は、
ずっとおいしいか?
熊本の若い世代が、「食」から熊本を考えた。
訪問者
峯 明希
熊本県立大学
環境共生学部
受入者
長尾 豊
グレープガーデン益城
熊本地震の際も一緒に避難した花粉。 輸入頼りから自給自足にシフト。
峯明希(あかね)さんは熊本県立大学環境共生学部で「食と健康」について研究をする20歳。栄養学を学ぶ中で地元産の農作物に興味を持ち、今回、初めて産地を訪れることになりました。 訪れたのは、グレープガーデン益城。観光農園とキウイ栽培に取り組む二代目の長尾豊(ゆたか)(28)さんは、2016年4月、熊本地震で被災してヘリで救出された時の経験が就農のきっかけだといいます。「持ち出せる荷物が1つに制限される中、父が手に取ったのはキウイの花粉でした。畑がどの程度の被害を受けたのか全くわからない状態で迷わず行動した父の姿に心を揺さぶられました 」と振り返ります。 長尾さんの農園では、雌花に雄花の花粉をひとつひとつ手作業で受粉させることで、種がぎっしり詰まった栄養価の高い果実を栽培しています。従来は雄木の花粉の一部を輸入で補いつつ、農園の9割以上占める雌木に授粉して、収穫量を確保していました。ところが昨今の円安や物価高を受けてコストが上がり、価格転嫁せざるをえない状況。長尾さんが作るキウイは栄養価も規格もすでに理想形に近いですが、さらに一段上のレベルに引き上げるため花粉の自給自足を試験的に始めています。花粉採取専用の雄木を農園のまわりに生け垣として植え、将来的にスタッフ全員が受粉を行えるようにノウハウを蓄積中。「さまざまな課題解決のためにも花粉の自給自足が急務」と前を向きます。
20歳が熊本県の食の未来を考えた。
有機質肥料にこだわり、着果量や水管理を徹底管理しながら育てられる長尾さんのキウイ。果肉を口に運ぶと糖度18度の甘さと酸味が広がります。取材を通して峯さんは次のように語ります。「ビタミンEが豊富に含まれているキウイの種。摂取することで細胞の老化防止が期待されます。自給自足した花粉を使うことでキウイの質も収量も上がるなら、栄養学の面からも期待が高まります。私にできることは、愛情と手間をかけた果実を無駄にしないために、規格外品の活用法を模索すること。定番のジャムなどの他にも、話題性のある加工物を製品化することができれば、生産者のPRはもちろん、熊本の魅力発信にもつながるはずです。」
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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