47都道府県合同企画
福井県は、
ずっとおいしいか?
福井の若い世代が、「食」から福井を考えた。
訪問者
田中 涼愛
福井県立大学
生物資源学部
受入者
黒川 友紀子
有限会社 黒川産業
福井県生まれの卵肉兼用種「福地鶏」が おいしく高品質なのに広まらない理由。
「食べることが大好き」という田中涼愛(すずな)さん。友人と2人で2022年12月に「(一社)あわらConnect」を立ち上げ、地元のおいしい食材を通して若者世代に農業への関心を持ってもらおうと、キャンパスがあるあわら市を中心に活動している。「福地鶏」との出合いは、大学1年生の時。コロナ禍のため、自宅での調理実習用にと送られてきた食材の中に、福井県の開発した卵も肉もおいしい卵肉兼用種・福地鶏があったのだ。「油淋鶏にしてみたら、家族にも大好評でした」とのことで、今回、福地鶏専門の養鶏農家である黒川産業の取材を楽しみにしていたと言う。この日対応してくれた黒川友紀子さん(31)は、養鶏農家の三代目。祖父の代は手広くブロイラーを飼っていたが、母・公美子さんが福地鶏の飼育に手をあげ、現在は県内の5千羽のうち約2千羽を飼育している。「鶏の健康に気づかい、納得できるものをと思うと作業がどんどん増えて」。平飼いする福地鶏は、卵を採るのも手作業。餌を仕入れるために、愛知県までトラックを走らせている。「『餌は絶対手を抜くな』というのが祖父の教えなので」と笑い、近隣農家の野菜を酢で発酵させて餌に漉き込むなどの工夫もしているそう。また県内の処理場は規模の関係で受け入れが難しく、県外に頼らざるを得ない。「だから卵も肉も高くなってしまう。品質には自信があるんですけど」と友紀子さんは唇を噛む。
22歳が福井県の食の未来を考えた。
出荷までの労力と、込められた思いを知った田中さん。「卵の値段が高くなるのも納得。でも毎日食べるものは安い方がいい。そうなると他の卵との違いを知ってもらうか、加工して新たな価値を加えるか。そしてそのことをどうやって伝えるかですね」と思案する。すると友紀子さんは、すでに卵や肉の加工品づくりに着手し、店以外にキッチンカーでの販売を始めたことを明かした。「うちのこだわりを、直にお客さまに伝えたかった」という言葉に、田中さんは「私たちは消費者が発信するSNSに関心があります。消費者に直接届く情報発信は、必ず効果があるはず」と後押し。「子どもが生まれてから命の大切さを実感すると同時に、農業を次の世代に繋ぐ責任を感じます」と言う友紀子さんに、「食べる方にもきっと伝わります」と田中さんは深く頷く。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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