ニッポン全国フードシフト中

AIは農業を救う

農業就業人口の減少や高齢化による深刻な人手不足を、ロボット技術で乗り越えようとする取り組みが始まっています。人工知能(AI)を活用したロボットが適期のピーマンやキュウリを見分けて、自動で収穫。将来的には、バッテリーを交換すれば24時間の稼働も可能で、収穫適期を逃しません。これまで人の手に頼らざるを得なかった作業をサポートするロボットは、農業の未来を明るく照らしています。

全国有数のピーマン産地、宮崎県新富町。この地に本社を構えるスタートアップのAGRIST(アグリスト)は、2019年に設立されました。町内にあった地域商社「こゆ財団」が地元の農家と一緒に「儲かる農業研究会」を開く中で、人手不足を解消するロボットを求める声が上がりました。これを受け、財団の代表がロボット開発の技術者と共同でAGRISTを設立。地元の大規模ピーマン農家の作業小屋のそばに設置したプレハブのラボから開発が始まりました。従来のロボットは地面を走行するタイプが中心でしたが、レールを敷くよりも初期投資が少なく、ハウス内のぬかるみで動かなくなるなどのトラブルも回避できることから、ビニールハウスの天井に張り巡らせたワイヤに吊り下げるモデルを採用。「安価でシンプル」をコンセプトに、開発当初はまずはピーマン1個の収穫を目標にしましたが、誤って枝を切断したり、枝に引っかかって止まったりして、思わぬところで壁に突き当たりました。しかし、そのたびに改良を重ね、苦労の末にピーマン自動収穫ロボット「L(エル)」が完成しました。

Lは、ワイヤを伝って移動しながら、3万枚以上もの画像を学習したAIがピーマンの大きさ、距離などを判別。適期の実を見つけるとアームが伸びて茎を切って、かごに入れてくれます。現時点ではピーマン1個を収穫するのに1分程度かかます。いずれはバッテリーの容量がある限り、昼夜を問わず収穫でき、取りこぼしによる規格外も減らせるようになります。

ロボットは日々進化しています。取締役COOの秦裕貴さんは「収穫作業の省力化だけでなく、AIが集めたデータを活用して、出荷時期の予想や栽培管理など、安定経営につながる開発をしていきたい」と、農業ロボットの可能性を広げる構えです。

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