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栽培の歴史120年!国産サフラン

パエリアやブイヤベースの色や香りづけに欠かせないサフラン。アヤメ科の花のめしべを乾燥させたもので、高価なスパイスとして知られています。1輪の花から3本しか取れないめしべを、手作業で1本ずつ丁寧に摘み取って乾燥させるという、骨の折れる作業の連続なので、値段が高くなるのも頷けます。栽培が盛んなのは中東や地中海沿岸、南ヨーロッパなどですが、実は日本でも120年も前から品質の高いサフランが生産されています。

日本で最も生産量が多いのは、大分県竹田市。「竹田式」と呼ばれる独特の栽培方法で、外国産に勝る香りの高さを誇っています。露地栽培が主流の外国産に対し、「竹田式」は10~11月に暗室で咲かせた花を収穫し、めしべを取り出して乾燥させた後、出荷します。花を摘み終えた後の球根は、茎と根を切り落として土に植え、立派な花を咲かせるための養分を蓄えます。5月に球根を掘り上げ、再び直射日光が当たらない風通しのよい暗室に保管し、開花を待ちます。植物の成長には、水、空気、適当な温度、日光、肥料が必要とされますが、竹田市は市内を複数の川が流れているため、年間を通して湿度が高く、土から掘り上げた球根に水を与えなくても花が咲きます。サフランは日光を遮られると、わずかな光を求めて真っすぐ伸びたり、栄養分を葉っぱよりも花に集めたりするので、めしべが大きくなります。日焼けによる退色も防げるので、色鮮やかなめしべができるというわけです。

市内でサフラン栽培に取り組む長谷川暢大さんは、「外国産は色が出やすいのが特徴ですが、竹田産は香りがとても強いので、料理の味を引き立ててくれます」と太鼓判を押します。多くの人に良さを知ってもらおうと、長谷川さんは、サフランティーやポン菓子、マカロニなどの加工品も手掛けています。

江戸時代に医薬品として日本に伝わったとされるだけあって、サフランには高い保湿力があるといいます。そのため長谷川さんは、めしべを抜き取った後の花びらを活用したハンドクリームや化粧品の開発も進めています。手間がかかるので生産者は減っていますが、深紅のめしべは希望の光に向かって、真っすぐに伸びています。

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