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やんばるの食でつなぐ地域の未来

沖縄県北部は「やんばる(山原)」と呼ばれる、豊かな自然が広がるエリア。この地で環境保全型農業を営む新規就農者が中心となり、飲食店、加工業者、宿泊施設など食に関係する事業者と連携し、2011年、「やんばる畑人(はるさー)プロジェクト」を立ち上げました。畑人は、沖縄の方言で「畑を耕す人」のこと。「やんばるはおいしい!」をコンセプトに、今では消費者をも巻き込んで、地域の食の魅力を発信しています。

プロジェクトは、運営委員長を務める芳野幸雄さんが、新規就農をした自身の経験から、後進をバックアップしようと結成した「沖縄畑人くらぶ」の農作物が評判を呼んだことがきっかけで始まりました。地元の飲食店から新鮮で安全・安心な農産物を求める声が大きくなったことを受け、芳野さんはやんばるでなければ味わえない食にこだわったプロジェクトの立ち上げを決意。農家、飲食店、加工業者などがスクラムを組み、生産、加工製造、販売までを手掛けることになりました。

第1弾は、スパイスミックス「やんばるスパイス」の商品化です。ドライ系スパイスの原料になる植物の原産地は、熱帯が多く、日本で流通しているものの多くが輸入に頼っています。芳野さんは、沖縄で伝統的に栽培されているウコンや島ショウガ、島トウガラシなど20~30種類の農産物が、スパイス原料として代用できることに着目。専門家に監修を依頼し、1年がかりで完成させました。「やんばるスパイス」にブレンドされる9種類のうち、やんばる産は4種類で、素材率は58%を占めています。肉料理や炒めもの、カレーやドレッシングなど用途も多彩。「やんばるスパイス」を使った料理を提供する飲食店や消費者からも「味に深みが出る」と好評です。その後も地元産率75%の「やんばるスパイスソルト」を販売したり、県内のクラフトビールメーカーや麦生産組合と共同でクラフトビールを開発したりしました。現在、農家20人のほか、地元野菜を提供する飲食店・宿泊施設など35軒が「シンカンチャー(沖縄の言葉で仲間たちという意味)」としてプロジェクトに参加。食でつながる活動が広がっています。

毎年3月には、「香祭(かばーさい)」と名付けたフードフェスティバルを開催。生産者や応援店が出店し、採れたての農産物や地元食材を使った料理などを販売します。スパイスを自由にブレンドできるイベントも用意。作り手の思いを消費者に直接届け、食の大切さを伝える活動を展開しています。

プロジェクト事務局長の小泉伸弥さんは「地域を元気にしてくれるスパイスを全国に広げ、各地の生産者とスパイスサミットを開いてみたい」と希望を語ります。

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