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夢も乗せて大空をかけるドローン

2020年5月。北海道でドローンを使い、農薬や肥料の散布を請け負う女性3人のチームが産声を上げました。ドローンを操縦する姿がミーアキャットに似ていることから、チーム名は「ママミーアキャット」。その名の通り、幼い子どもがいる母親によって結成されました。農薬の空中散布は男性中心だったので、発足当時、女性だけのチームは全国初。今では東北や関東、九州に支部が増え、活躍の場を広げています。

北海道に拠点を置くドローンを使った空撮や農薬散布を請け負う会社Rave Projectの代表・請川博一さんが、日進月歩で進化するドローンに将来性を感じ、「コンパクトなドローンなら女性だけのチームでもいける!」と思い立ち、メンバーをSNSなどで募集。賛同した東京在住の2人と北海道1人のチームが誕生しました。3人はオペレーターの認定証を取得するための研修を重ね、見事に全員合格。北海道で活動を始めました。散布は夏場に集中するのでその間、東京の2人は北海道に滞在しました。

ママミーアキャットが使うドローンは1機約7キロ。約1メートル四方の中に4つのプロペラがあります。プロペラがついているアームは折りたたみが可能で、軽くてコンパクトに持ち運びができるので、効率を落とさずに作業ができます。1ヘクタールを散布する所要時間は約8分。2020年は130ヘクタール、21年は178ヘクタールを請け負いました。こうした活動が知られるようになり、22年には東北と関東に支部が発足しました。東北支部の立ち上げメンバー・石岡有佳子さんは青森在住で一児のシングルマザー。北海道に通って研修を受け、今ではオペレーターに加えてドローンの指導教官、都道府県知事が認定する農薬管理指導士の資格も取得。技術と農薬の専門知識を持つプロ集団として農家から強い信頼を得ています。22年度は北海道と青森で864ヘクタールを散布しました。石岡さんは「安全・安心を第一に『頼んで良かった』と農家の方に喜んでいただけて、やりがいを感じています」と話し、今後はライフイベントも共に乗り越えながら働ける場として、メンバーを広げる考えです。

ドローンは意を同じくする女性たちの夢を乗せ、日本列島を縦断する勢いです。

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