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柿から始まった新たな挑戦

柿の市町村別生産量で、全国トップを誇る奈良県五條市で150年にわたって柿を栽培してきたのが柳澤果樹園。5代目として代表を務める柳澤佳孝さんは、自慢の柿を一人でも多くの人に知ってもらおうと、新しい挑戦を続けています。高糖度のブランド柿「霜朱宝(しものたから)」の生産はもちろん、柿畑がある山の頂にカフェとグランピングを楽しめる施設を開設。市内を見下ろす絶景と、地元で採れた食材の魅力を活かしたメニューで訪れた人の心をつかんでいます。

柳澤さんは20代のころ、アルバイト先の接客で多くを学んだ経験から、農業のやりがいや自らが生産した農産物への愛情を、消費者に直接伝えて理解を深めてほしいとの思いを強く抱くようになりました。信頼する農業の先輩から背中を押されたことがきっかけで2010年、「こもれび」と名付けたカフェと農家民宿をオープン。白い壁と木製のドアが目を引く建物は、南フランスを彷彿させます。カフェでは地元の食材を使ったメニューがずらりと並び、自作の石窯で焼いた特製ピザが売り。同じ敷地内にある直売所では柿、自家製農産物で作ったジャムやドライフルーツ、梅干しなどを販売。1日1組限定で始めた農家民宿は現在、グランピングとバーベキューが楽しめる施設にリニューアルしました。標高330メートルの山から見下ろす景色は壮観で、夜は満点の星空を見上げることができます。

事業を拡大する中で個人経営での限界を感じ、2014年には果樹園を法人化。東南アジア諸国でニーズが高い柿の輸出を本格的に始めました。現在は自社生産に加えてJAならけんから仕入れて輸出しています。柿をドライフルーツやジャムに加工したり、タイやカンボジア、シンガポールなどへ富有柿を輸出したり、新境地を開拓しています。

2022年には2店舗目となる古民家カフェを五條市内に出店。これまでとは趣を変えた和テイストのカフェとして親しまれています。「これからも柿農家として地元に根差し、事業を広げることで雇用を生んだり、国内外の方に来ていただいたりして、五條の良さを伝えていきたい」と前を見据える柳澤さん。住んでいなくても、地域といろいろな形でかかわりを持つ関係人口を増やすのが目標の1つです。

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