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すっぱいレモンで笑顔に

輸入が大半を占めているレモンの中で、国産は防カビ剤を使わないので、皮まで安心して食べられるとして人気が高まっています。栽培には冬が温暖で夏の雨が少ない地方が適していますが、栃木県宇都宮市を中心に、空いているビニールハウスを使って栽培したレモンを生産者グループが「宮れもん」と商標登録し、産地化と消費拡大に乗り出しています。

「宮れもん」として栽培される品種の一つ「璃の香(りのか)」は、大玉で皮が薄く、果汁が多いのが特徴。皮の苦みが少なく、酸味もまろやかなことから、加工用にも適しています。そこに目を付けたのが、普段から地域の特産物や規格外の農産物を活用した商品開発に取り組んでいる、栃木県立宇都宮白楊高校食品科学科の生徒たち。生産者の力を借りながら、地元の新たな特産を使ってパンとパウンドケーキを開発しました。

「宮れもん」の収穫時期は11~2月と限られてしまうことから、マーマレードに加工して1年中使えるようにしました。外皮はもちろん、アルベド(内果皮)と呼ばれる白い部分も余すところなく使っているのがポイント。通常はとろみを出すためにペクチンを添加しますが、「宮れもん」はペクチンを豊富に含むアルベドを使っているので、加えるのは砂糖だけです。

さらに生徒たちは、パウンドケーキの小麦粉を地元の米粉に代えて、より栃木県産をアピール。食感を高めるために卵の混ぜ方を変えたり、はちみつを加えたりして試作を重ねた結果、レモンの香りも食感も最高のケーキが完成しました。自信作を地元のイベントで販売したところ、瞬く間に完売。食後のアンケートでも「香りがいい」「米粉なのにパサパサしていない」「宮れもんを知ることができた」と高い評価を得ました。

宇都宮市内の和菓子・洋菓子店、レストランからも引き合いが強く、需要に追い付かない「宮れもん」。生産者は今後、出荷量を増やすだけでなく、ハウス内でミツバチを飼ってはちみつの生産も検討しています。すっぱいレモンですが、眉間にしわを寄せることなく、地域に笑顔を広げています。

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