ニッポン全国フードシフト中

海外でもオッケ(桶)~

2013年、ユネスコ無形文化遺産に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録されたのを機に、世界中から和食への関心が一気に高まりました。海外に出店する日本食レストランやインバウンド、農林水産物・食品の輸出が増加。この流れに乗り、日本を代表する調味料として存在感を強めたのが醤油です。2013年に42.7億円だった輸出額は、2021年に91.4億円と過去最高を更新。中でも昔ながらの製法で造る「木桶仕込み醤油」は、1本(500ミリリットル)が50ドル弱という高価であるにもかかわらず、「KIOKE SHOYU」のブランドで売り上げを伸ばしています。

木桶仕込み醤油の高い評価の背景には、香川県小豆島にある、木桶で製造する蔵元の5代目・山本康夫さんが直面した危機感があります。2009年、山本さんが製桶所に新しい木桶を発注したところ、職人の高齢化を理由に、新桶の注文は今回限りで、この先は修理も頼めない厳しい現実に突き当たりました。そこで山本さんは仲間の大工と共に発注先の製桶所に頼み込み、2日間だけ桶作りの伝授を受けます。しかし、ノウハウを独り占めすべきではないと意を決し、2013年、全国の同業者や関係者に声を掛け、「木桶職人復活プロジェクト」をスタート。毎年1月、小豆島に集まって、木桶を作る活動に乗り出しました。

木桶が作れる人材が増え始めた2021年、政府の輸出重点品目に醤油が選ばれたことを受け、山本さんらは農林水産省が行うGFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)と連携し、そのサポートを受けながら、プロジェクトメンバーを中心に25社で「木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアム」を設立。「世界の醤油市場の1%(金額ベース)を木桶仕込みに」を目標に、桶職人の育成、生産者の収入確保、品質の高い醤油の供給など、全てのステークホルダーがウィンウィンの関係になる取り組みをGFPと連携しながら展開しています。

こうしたストーリーを海外メディアが相次いで発信したことに加え、醸造元ごとに香りや味わいが異なる木桶仕込み醤油はワインに通じるとして、世界中の富裕層や美食家の舌を魅了。人気に拍車がかかりました。ブームで終わらぬように多言語展開のWEBサイトを立ち上げたり、輸出用ラベルに生産背景を伝えるQRコードを付けたりして、消費者の心もつかんでいきます。

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