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捨てるのは「もったい苗」

大きさや形が規格内に収まらなかったり、傷がついたりした野菜や果物は通常、市場に出回ることはありません。これと同じように野菜の苗にも規格外品があり、栽培すればおいしい野菜が採れるのに、捨てられてしまう実態をご存じでしょうか。

こうした廃棄苗を有効に活用しようと立ち上がったのが、京都府の大学生、田中愛乃さんと福田奈津実さん。高校の同級生だった二人は、福田さんの実家が苗農家だったことから、探求授業の一環で廃棄苗の問題を取り上げることになりました。農家が丹精込めて育てた苗を「捨てるのはもったいない」との思いから、廃棄苗を「もったい苗」とネーミング。2021年4月にプロジェクトが始まりました。

二人が最初に手掛けたのは、学校近くの園芸店や苗農家に協力を呼びかけ、譲り受けた廃棄苗を教材にした食育授業です。廃棄苗の存在を手書きのフリップにまとめ、地元の小学校や児童養護施設で子どもたちに説明。一緒に苗を植えて、立派に野菜が収穫できることを証明しました。一般の消費者向けには、農家から買い取った廃棄苗を栽培キットにして販売し、売り上げの一部を農家に還元。児童からは「自分たちの行動で問題を救えてうれしい」、消費者からは「育てる楽しさだけでなくSDGsへの貢献が実感できる」といった声が上がっています。また農家からは「捨てるしかなかった苗が活用されて売り上げにもつながった」「二人の熱意に励まされた」と喜ばれ、「三方よし」を実現しました。

現在、二人は大学に通いながら、メーカーと協力して廃棄苗の商品開発に取り組んだり、苗そのものの利用価値を模索したりしています。夢は廃棄苗を使って栽培、収穫、料理を体験できる食育のテーマパークを展開すること。「もったい苗」の成長は、これからも続きます。

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