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和牛×雪室=エコ+輸出

冬場の雪を地面に掘った穴に集めてワラで覆う雪室。北国の山間部では古くから生鮮食品の冷蔵保存に利用されてきました。新潟県の株式会社ウオショクはこの伝統技法を使って和牛を熟成させ、雪室ブランドとして販売。海外でも売上を伸ばしています。

世界の日本食ブームを背景に人気の高い和牛ですが、海外市場は鹿児島や宮崎といった他県産が圧倒的シェアを握り、当初は価格的にも太刀打ちできない状況でした。そこで目をつけたのが新潟の風土を生かせる雪室。自社の貯蔵庫を雪で覆い、その中で全国から選び抜いた高品質の黒毛和牛をじっくり寝かせる方法を2年がかりで開発しました。

雪室は微妙な温度変化や振動の影響を受ける冷蔵庫と違い、熟成に適した1℃から3℃の温度と95%以上の湿度を常に保つことが可能。CO2や冷蔵コストの削減にもつながる地球に優しい天然の冷蔵庫です。和牛へのストレスが少なく、熟成による酵素の働きで肉質が柔らかくなり、たんぱく質が分解されアミノ酸が増すことで旨味もぐんとアップ。他県の産地ブランドとは一線を画す高付加価値化を実現しました。

2018年からタイやシンガポールを中心にアジア向けの輸出を始めるとたちまち人気に火がつきました。雪国の冬を感じさせるストーリー性が現地のレストランでも「わかりやすく顧客に説明できる」と高評価を得ています。翌年には牛肉大国のアメリカにも輸出を広げ、売上は当初の10倍にまで増えています。

雪室ブランドを展開する協同組合も結成され、和牛だけでなく、雪で熟成させた米や珈琲、お茶などの農産物を「越後雪室屋」の共通ロゴで海外に売り出す構想も動き始めました。日本の伝統技法が海外ブランドへと深化を遂げています。

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