静岡県の株式会社岩清は天保3年創業。江戸時代から続く塩鯖加工の老舗です。近年は消費者の魚離れから売上が落ち込みましたが、輸出用の鯖ラーメンの開発で海外販路の開拓につなげました。
静岡県はムスリムの観光客や留学生が多く、まず中東向けに試作を始めました。苦労したのがイスラム教徒も口にできるハラル対応のスープづくり。地元焼津の小川港で揚がる新鮮な鯖を使い、静岡県と共同でマリンバイオ技術を使ったサバエキスを2年がかりで開発。畜肉や人工調味料を使わず、鯖の旨味が引き立つ和風スープを完成させました。使用する醤油や味噌も戒律で禁じられたアルコールを含まないものを厳選しています。
輸出先の一つに選んだのがアラブ首長国連邦のドバイ。砂漠が多く農業に適さないため古くから魚を食べる文化が根づき、現地好みの味と好評です。パッケージには「Made in Japan」の表記を入れ、ニッポンの安全安心をアピール。
ラーメンになじみのない人にもわかるようレシピや調理方法を英語で解説した動画を公開し、“ニッポンラーメン”の知名度アップを図っています。
海外進出のノウハウは食品輸出に向けた国の支援策の一つである「輸出塾」で学び、販路開拓のビジネスマッチングを活用。商社を通さず現地バイヤーと直接商談し、要望を柔軟に取り入れ、EUや米国にも輸出を広げています。「おいしくて安全な日本食を体験してほしい」との思いから、岩清では「市場は世界」が合言葉になりました。鯖ラーメンは魅力あふれる“日本食外交”の役割を果たしています。