第2部 クロストーク
登壇者の皆様
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梅本ゆうこ -
伊藤遊 -
吉村和真 -
倉持佳代子 -
ユースギョン
クロストーク

食べるのがエンタメになるみたいなので言うと、『かっこいいスキヤキ』の泉昌之(久住昌之と泉晴紀の共作名義)のデビュー作にあたる『夜行』が最初ですよね。あれに影響を受けた人はすごく多いと思う。この作品でただ弁当を食べるだけで、こんなにドラマチックな話になるんだって言うことを示したのが、その後の『孤独のグルメ』などに繋がっていくと思うんです。
久住さんもよく言ってますけど、発表当時は全然ウケなかったんですよね。


すごいマンガができた!ってメジャー誌に持ち込んだけど、全く相手にされなくて、最終的にも売れなかった。だから早すぎたんですよね。ようやく久住さんに時代が追い付いたという。
最近は、海外に行ってすごいドラマが起きるとかじゃなくて、「お散歩マンガ」みたいな、半径500メートル位でのご近所をおもしろく描くみたいなエッセイマンガも流行ってきてますよね。出来事ではなく、視点のおもしろさで見せるような。


だから、読者のリテラシーが高くなってきたということですよね。ドラマもオチもなくても、何を書いても自分で補完できる食のイメージをリテラシーとして持ってる読者がいる。それが日本社会のすごいところだなと今回改めてわかりました。
食べるだけでエンタメになるように変わってきたのは、食べることは人様に見せるものではないという抑圧が解放されてきたという時代の流れもあるんでしょうか。ジェンダー論に繋がるような。

確かに。「食べるだけマンガ」が流行りだした頃は、エロと結びついた食マンガがすごく多かったんです。おいしいって言ってる顔がエクスタシーを感じているような顔になる表現が多くて、辟易した時期もあったんですが、そこを超えて、また違う食マンガの進化みたいなものを最近感じています。
YouTubeでも最近、ひたすら食べる様子を見せる番組が人気を集めてますよね。食べるだけでも楽しめるリテラシーはマンガだけに限ったことではないのかもしれません。


そういう意味では僕は、先ほどのインスタグラムの食べ物写真とかも、楽しむリテラシーを持ってない人間ですね。具体的には何が楽しいんでしょうか?
女子トークみたいな感じなのかもしれませんね。共感というか、終わりのない会話みたいなもので、理由付けを求めない。