47都道府県合同企画
三重県は、
ずっとおいしいか?
若い世代が、農林水産業のあり方を通して、「食」の明日を考えた。
訪問者
松井 くるみ
三重大学
大学院工学研究科
受入者
中北 敏広
真珠養殖など生産者
受入者
尾崎ななみ
株式会社サンブンノナナ
新たな視点で課題に取り組む尾崎さんに 真珠の可能性について尋ねる。
松井くるみさんは、三重大学大学院工学研究科に通い、有害物質の分析方法の開発を研究のテーマに掲げ、研究室では環境分野へのアプローチ技術を学んでいます。昔から独自の遊びを考えることが好きだった松井さんは、人のために役立つものづくりに興味がわき、大学3年の時、環境について深く学びたいと大学院に進学。環境などの社会課題に取り組む真珠養殖の生産現場を経験するため伊勢志摩を訪れました。伊勢志摩は真珠養殖発祥の地で、県内の真珠生産額は最盛期には約270億円に上るなど地域産業を支えていましたが、海洋環境の悪化などから生産性が低下し、現在は最盛期の一割前後に減少。高齢化や後継者不足にも直面しています。そこで伊勢志摩出身の尾崎ななみさんと養殖歴70年以上の祖父の敏広さんは地域産業と海の環境との持続可能な共生関係の再生を図ろうと取り組みを進めています。尾崎さんは2013年、ミス伊勢志摩に選ばれ地域のPRを担う中、真珠の魅力と課題を知り、真珠養殖をする祖父の手伝いを始めます。仕分けをしていた時、尾びれが付いていびつな形の真珠に魅力を感じ、「金魚真珠」と命名し、商標登録をしました。本来なら流通に乗らなかった真珠をエシカルで持続可能な社会への思いをのせた唯一無二の変形真珠のジュエリーとして展開。ユニークな商品は話題を呼び、2023年には「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員特別賞を受賞。新たな視点により変形真珠の価値化に成功しました。
24歳が三重県の食の未来を考えた。
核入作業や浜揚げなどを体験し、尾崎さんから変形真珠を使ったジュエリーの開発経緯などを聞いた松井さんは話します。「海で3、4年かけて1粒が作られる真珠は、人と豊かな自然との合作だと思いました。海洋環境の悪化などにより、生産量が減少するなか、課題解決につながる視点を変えた尾崎さんの発想に感銘も受けました。取り組みは、環境に配慮しているかを重視する消費者の意識を高め、金魚真珠の売り上げが増えてることも知れました。きれいな海から生まれる真珠にも環境が大きな影響を与えているということを意識し、これから働く会社においても、環境に配慮した製品の開発を目指していきたいです」。
ニッポンをずっとおいしく。
ニッポンフードシフト進行中
「食から日本を考える」ニッポン フード シフト。生産者、食品事業者と消費者が共に「食」を考え、行動しようという運動です。2021年のスタートからこれまでの間にも「食」に関わる課題はさらに多様化し、より現実的で切実なものとなってきました。そんな状況に対して「食」の現場からは、全国各地様々な意見が上がり変革への挑戦が続けられています。今こそ、消費者の一人ひとりが「食」の現状を認識し、我がこととして取り組む必要があります。
今日は成人の日。全国で*108万人(18歳)の「新しい大人」がデビューします。日本の「食」がずっとおいしくあるためには、これからを担う若い世代が、真摯に「食」を考え、新鮮な発想をもって行動することが切に求められています。「食」を考えることは社会を、そして未来を考えること。そんな課題を「新しい大人」のみなさんに問いかけたいと思います。
*総務省 2022年10月1日現在の人口推計に基づく
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