紙面からニッポンフードシフト

熊本県から、ニッポン フード シフト。

輸出

熊本日日新聞 2022年1月10日掲載

海外の市場に活路を見いだす

森川竜典さんが、イチゴ農家だった祖父の跡を継いだのは11年前の24歳の時。父は非農家で、自身も建築関係の仕事に従事。そこから「ふと思い立って(笑)」の就農でした。しかし、就農した翌々月に祖父が他界。周囲の生産者に教えを請いながら無我夢中の日々が続きました。しかし、それでも思うような生産はできません。気づけば2年間で800万円もの借金が。そんな時、偶然テレビで見たのが“白いイチゴ”。1粒1000円ほどもする高級イチゴです。「経験の乏しい自分が、今の状況から一発逆転を狙うにはこれしかない」と直感。ただし、この当時の出荷先は一部の市場に限られており、販路拡大も重要な課題でした。展示会に出展したり、商社を訪ねたりする中で出会ったのが“輸出”というアプローチです。香港に出荷したところ、出せば出すだけ売れるという状況に。あっという間に、借金も完済できました。その後、独学で輸出のノウハウを身につけ、シンガポールやマレーシア、タイ、アメリカ、ドバイなど、次々と輸出先を拡大。年商は1億5000万円に達しました。海外での成功の要因は、高い品質を維持するための徹底した選別です。はじいたイチゴを有効活用できる環境を整えることで、より高いレベルの選別を実現。さらに、国際空港に近いエリアにグループ会社を展開することで、空輸におけるアドバンテージも確保。これまでの農業のイメージにとらわれないグローバルな戦略は、ここで働く若い農業志望者たちにも大きな夢を与えています。

47都道府県からニッポンフードシフト
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