紙面からニッポンフードシフト

福岡県から、ニッポン フード シフト。

有機
農業

西日本新聞 2022年1月10日掲載

甘夏の再生で地域を活性化

ハンドプレスの甘夏みかんジュース、オリーブの葉を使ったオリーブリーフロールケーキ、自家製の天然酵母ピザ。福岡県糸島市のカフェ「お菓子と暮らしの物 りた」で若松由加利さんが提供するメニューは作り手が分かる食材が使われ、果物や野菜のおいしさが際立ちます。カフェは、若松さんと夫の潤哉さんが農薬や化学肥料に頼らない農法で甘夏、オリーブ、ビワなどを育てる「わかまつ農園」が運営しています。2013年に東京都から糸島市へ移住し、農業を学ぶ中でかつて糸島が甘夏作りで栄えていたことを知ったという若松さん。「時代と共に輸入の果物が増え、『甘夏では生計が立てられない』とほとんどの農家がやめてしまったそうです。全盛期の名残で、山深くまであちこちに甘夏の木が植わっています」。甘酸っぱくて味が良く、栄養も豊富な甘夏。こんなに価値のあるものが、もったいない―。夫妻は甘夏の耕作放棄地を借り受け、自然の循環を大切にした方法で栽培を始めました。農業を安定したなりわいとするため、収穫した作物で洗剤や精油などの加工品を開発し、飲食ができる「りた」を21年夏にオープン。農家仲間が作った農産物を販売する直売所も併設しています。直売所は委託式が慣例ですが、「作る人と売る人が平等でありたい」との思いから、買い取り式と出品者の手数料ゼロに挑戦しています。自利利他円満から付けた店名の「りた」。自分だけではなく、周りのみんなも一緒に幸せになる場所を目指しています。

47都道府県からニッポンフードシフト
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