紙面からニッポンフードシフト

愛媛県から、ニッポン フード シフト。

有機
農業

愛媛新聞 2022年1月10日掲載

有機かんきつで段畑守る

法花津湾を囲むように段々畑が広がる西予市明浜町狩浜地区。1974年、農薬や化学肥料ありきの近代農業に疑問を抱いた若者たちがイヨカンの有機栽培に乗りだしたのが「無茶々園」の始まりでした。生産から販売まで一貫体制で、環境負荷低減へ独自基準で栽培したかんきつを組合員から全量買い取り、農家収入を安定化。みかんジュースや精油を用いた化粧品などの商品開発も進め、グループ全体の売上高は2020年度に10億円に達しました。出荷農家は現在176戸。無茶々園の農家が生産している園地は狩浜地区の7割、旧明浜町全体では3割を占めます。人口減少が進む中、安心して老後を送れるようにと介護事業にも参入。持続可能なむらづくりへの試みを続けています。「先人が築き上げてきた段畑。引き継がないのはもったいない」。4年前にIターン就農した菅谷秀(しゅう)さん=茨城県出身。農業高校の後輩で同地区出身の斉藤満天(まんてん)さんの縁でした。約1.3㌶の園地を借り受け、温州ミカンやイヨカンを栽培しています。薬剤は極力使用しないため急傾斜地での除草は大変な労力ですが「安全安心な作物を作ることはあるべき農業の姿」ときっぱり。21年、第1子が生まれ、根を下ろす覚悟は一層強くなりました。良きライバルでもある斉藤さんと語り合う夢は「切磋琢磨(せっさたくま)できる仲間を増やしていくこと。人が人を呼ぶ。人が集まればもっと面白い場所になる。そのためにも良いかんきつを作りたい」。まっすぐ前を見据えています。

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