紙面からニッポンフードシフト

和歌山県から、ニッポン フード シフト。

有機
農業

産経新聞 2022年1月10日掲載

持続可能な有機農業を広めたい

和歌山県田辺市の「田辺印の会」は、JA紀南で有機農業に取り組むグループです。現在、14戸の農家が化学肥料を使わず、自然由来の農薬で南高梅を栽培しています。最年少の会員、宇田川啓太さんは32歳。茨城県の米農家に生まれ、幼い頃から田植えを手伝うなど、農業には慣れ親しんできました。環境問題に興味を持ち、筑波大学で農業や環境を学んだことがきっかけで有機農業を志します。有機農産物を販売する会社に勤務しながら就農の準備を進め、3年前に移住。前会長から梅の栽培を教わり、畑を受け継ぎました。会では、自分たちで梅の畑に合った堆肥を手作り。山の上の堆肥場で土着菌(地域に根付いたさまざまな微生物)に米ぬかなどを混ぜ込み、発酵させて堆肥に仕上げ、それぞれの畑で使います。除草剤を使わないため、草刈りの手間はかかるものの、土に負担をかけない仕組みが農業を持続可能なものにすると宇田川さんは考えます。有機農産物は事前に単価を契約することが多く、相場に左右されないことにも魅力を感じています。また、学生時代に形の良くない野菜が畑に捨てられる様子を目の当たりにした経験から、ある程度の傷がある梅も受け入れてもらう契約を結び、食品ロスの削減にも貢献しています。地域で有機農業に取り組む農家は、まだわずか。仲間を増やして、環境に負担をかけない仕組みを広めるのが目標です。

47都道府県からニッポンフードシフト
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