紙面からニッポンフードシフト

神奈川県から、ニッポン フード シフト。

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神奈川新聞 2022年1月10日掲載

都市農業の新たな可能性を

鮮やかな赤い実が食卓に彩りを添えるトマト。川崎市北部・多摩丘陵の緑豊かな一角で、先祖代々の畑に心血を注ぐのは、ICHIKAWA TOMATO FARMの園主・市川悟さん。「父たちが作ったトマトは、味の濃さや甘みが強かった。あの味に追いつきたいですね」。普段から何気なく食べてきた味の再現を目指しています。団体職員として働いていた2016年に、父と祖父が相次いで他界。先人たち以上に自慢の作物を広められるのではないか、との思いは、SNSの交流から具体化しました。少量多品目栽培が中心という都市農業の課題解決へ、販売力と生産力の向上に着目しました。同世代の地元農家をつなぎ、販路拡大を目指した組織「畑から、台所へ。」を同年に結成。しんゆりフェスティバル・マルシェなどのイベント出展を通じて消費者と直接触れ合い、売れ筋の野菜は何か、どういう袋詰めが好まれるかなどを追求しています。翌年には、若手農家に生産技術を伝承するグループ「レインボー農人(のうと)」で集団営農を始めました。連携と情報共有で収穫量増による安定供給、大型店や学校給食などの大口需要への対応を目指しています。「それぞれから技術を各自持ち帰り、作物に付加価値を付けて売るという流れもできています」と工夫の成果を強調します。新鮮な野菜が地産地消できる都市農業の長所を念頭に「この野菜があるからこの街に住みたい、と言ってくれる人を増やしたいですね」。〝農が結ぶまちづくり”、そんな将来も思い描いています。

47都道府県からニッポンフードシフト
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