コロナ禍でのリモートワーク導入を追い風に、旅先でテレワークをしながら休暇を楽しむワーケーションが注目されるようになりました。こうした中、北海道石狩市は、農作業(アグリ)と休暇(バケーション)を組み合わせた体験型のプログラムを実施しています。その名も「石狩アグリケーション」。市内の農家で農作業を手伝いながら休暇を満喫する新たな取り組みは、地域や農業の魅力を発信できるので、関係人口の増加につながると地元の期待も高まっています。
石狩アグリケーションは、2020年に始まりました。プログラムは「ベーシック」「スマート」「アドバンス」の3つ。「ベーシック」は週に4~5日間、午前8時から午後5時(昼休憩1時間)まで農作業に従事します。「スマート」は週に4~5日間、午前8時~12時までは農作業、午後は本業のテレワークに従事。「アドバンス」は市内での就農希望者向けの長期プログラム(原則2カ月間以上)で、週5日間、午前8時~午後5時(昼休憩1時間)まで農作業をすることになっています。2024年度は「ベーシック」と「スマート」の募集に限定しましたが、どのプログラムも週休2日制。参加者には、農作業に従事した日数に応じて支援金が支給されるほか、参加期間中は男女別室のシェアハウスが用意され、無料で利用できます。シェアハウスから圃場までの送迎は、市内の受け入れ農家が担当。2024年度からは石狩市内を管内に持つJAさっぽろが主体となって事業運営を行っています。受け入れ期間は例年、夏から秋にかけての農繁期で初心者も多いため、作業は危険を伴わないミニトマトやジャガイモ、ニンジンなどの収穫が中心です。
事業開始から4年間で、88人が参加。道外からの参加者も多く、すでに3人が移住しました。大阪の大手農業機械会社は社員研修の一環で新入社員に参加させるなど、教育的な効果も期待されています。
石狩市農政課で農業総合支援を担当する河田寛史さんは、立ち上げから事業に携わってきました。「アグリケーションが終わってからも石狩を訪ねてくれる参加者がいて、受け入れ農家との交流が続いています。関係人口が増えているのがとても嬉しいです」と手応えを感じる河田さん。石狩発の取り組みが、少子高齢化や過疎化に悩む地方に福音をもたらすことを願っています。