NFS_curry_Hanako
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meets124RNAVIGATO31.黒田夫妻が暮らすのは福知山市大内の小さな農村、広大すぎる山付き物件。「人口100人、65歳以上の方が60%を占めるこの集落の住民で、狩猟をするのは僕ら夫婦だけなんです」と、黒田さん。耕作放棄地も多く、黒田夫婦が一部の畑を譲り受ける予定。2.捕獲動物へ与える痛みが抑えられた「くくり罠」を使用。3.寄せエサは、発酵させた米ぬか。4.捕獲するホンシュウ鹿の体重は40~60kgだが、そのうち食肉となる(歩留まり)のは40%ほど。重労働のわりに儲けになる部分も少ない。ジビエ“害獣”でも命はおいしく、です。動機は、愛。農家さんの力になりたい!ジビエハンター黒田健さん・圭子さんくろだけん・けいこ/昨年閉店した心斎橋のバー[anonymous]にて、バーのレベルを超えるカレーを作ってた夫と、それに魅せられた妻。健さんはわな猟、圭子さんはわな猟と銃猟の免許を持つ。鹿が罠にかかってからの初動の早さが、肉質や旨みの質を変える。なんとキレイな小豆色。 バー時代から「食材を獲るところから、口に入るまで。カレーの全工程に携わりたい」と思っていた黒田さんはいま、プロデュースする店[ポンガラカレー]で自身が仕留めた鹿の肉を提供。店に顔を出しに行く(=都会に出る)ときは、「福知山の変」と書かれた地域プロモ用ポロシャツを着て、まちの宣伝隊長しちゃってる黒田さんだ。鹿や狸、猪といった動物が豊富に暮らす、田畑を荒らされる被害に頭を悩ませる、農家の皆さんも。そこで立ち上がったのは、大阪カレー界のトップランナーだった!?関西の山々。だけどその一方で、カレーマイスターがジビエハンターへ転身。 かつてスパイスとたわむれていた人は、い まは京都・福知山の山に分け入って鹿を仕留 める。スリランカカレーの名手と呼ばれた人 は、猟師になった。大阪・心斎橋でカレーバー[anonymous]を営んでいた黒田健さんのことである。なんでどうして、の先に力強い言葉が待っていた。「日本の野菜はオレが守る! って決めたんです」。 そもそもジビエとカレーは親しい間柄であり、黒田さんにも指名買いするジビエハンターが福知山にいた。のちに狩猟の師と仰ぐこととなる人から、農村のシビアな現状を教えられたという。「野生鳥獣による農作物被害が深刻で、さらに高齢化と過疎化が進む農村には、狩猟する人がいないと聞いて。大事に育てた野菜が、収穫前にダメになる。農家さんの精神的ダメージを考えると、いたたまれなくて…」。そのときすでに黒田さんは、狩猟免許を取得済み。もともとはバーの常連だった妻の圭子さんも、「自給自足の時代がくるだろうから、狩猟(免許)は取っておこう」と、将来に備えていた。この夫婦、強すぎる…。 ともあれ、2021年から大阪と福知山の二拠 点生活をしながら狩猟をはじめたふたりは、2022年に福知山へ移住。罠にかかった鹿 は、放血などの処理をすぐに行い、食肉処理業の許可を受けた施設で適切に処理しなければ食肉として活用できない。完全移住は、おいしく命をいただく、という生の循環をするための決意表明なのだ。カレーショップ経由!?福知山のジビエハンター。

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